天甕津日女命ゆかりの神社を訪れたい方に向けて、后神として祀られる伊努神社を中心に、出雲や岐阜・愛知に伝わる祀り社の参拝情報をまとめました。
天甕津日女命の正体や名前の由来については「天甕津日女命とは?出雲国風土記に記された正体と名前の由来」、ご利益については「天甕津日女命のご利益とは?」であわせて解説しています。
目次
- 天甕津日女命を祀る神社一覧
- 伊努神社(島根県出雲市)
- 東側に鎮座する蘆高(葦高)神社
- 多久神社(島根県出雲市)
- 花長上神社(岐阜県揖斐川町)
- 阿豆良神社(愛知県一宮市)
- 参拝の作法と問い合わせ
- よくある質問(FAQ)
- 関連記事
- 参考文献・出典
天甕津日女命を祀る神社一覧
天甕津日女命(天御梶日女命と同一視される女神)を祀る・ゆかりの主な神社は次の通りです。各神社の情報は変更される場合があるため、参拝前に公式サイト等で最新情報をご確認ください。
| 神社名 | 所在地 | 天甕津日女命の祀られ方 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 伊努神社 | 島根県出雲市西林木町376 | 后神(配祀) | 式内社。主祭神は夫神・赤衾伊努大住比子佐倭氣命。式内社4社を合祀 |
| 蘆高(葦高)神社 | 島根県出雲市美野町935 | ―(夫神を祀る対応社) | 伊努神社の東側、あぜ道を歩いて約5分。夫婦神が向かい合う配置 |
| 多久神社 | 島根県出雲市多久町274 | 主祭神(天御梶日女命と同一視) | 式内社・多久神社に比定。旧称・大船大明神。雨乞いの石神伝承 |
| 花長上神社 | 岐阜県揖斐郡揖斐川町谷汲名礼1211-1 | 主祭神 | 式内社・花長神社に比定。七社明神とも称した古社 |
| 花長下神社 | 岐阜県揖斐郡揖斐川町谷汲名礼848-1 | ―(夫神を祀る対応社) | 花長上神社の真南約1.4km。祭礼は両社で交互に行われる |
| 阿豆良神社 | 愛知県一宮市あずら1-7-19 | 天甕津媛命(阿麻乃弥加都比女)として祀る | 『尾張国風土記』逸文の伝承を由緒とする |
伊努神社(島根県出雲市)

- 所在地:島根県出雲市西林木町376
- 主祭神:赤衾伊努大住比子佐倭氣命(あかぶすまいぬおおすみひこさわけのみこと)
- 后神(配祀):天甕津日女命
- 社格:式内社(明治4年11月に村社に列格)
- 御神徳:家内安全、産業発展
- 例祭日:4月29日
- アクセス:一畑電車「一畑口」駅から車で約7分
伊努神社は、『出雲国風土記』秋鹿郡伊農郷・出雲郡伊努郷の地名由来に登場する古社で、式内社に比定される「往昔よりの氏神産土神」です。主祭神は国引き神話で知られる八束水臣津野命の御子神・赤衾伊努大住比子佐倭氣命(穀霊神として崇められる)で、天甕津日女命はその后神として配祀されています。天甕津日女命が国内を巡行してこの地に着き、「ああわが夫よ、伊努よ」と発した言葉が、「伊農(伊努)」という地名の由来になったと伝えられています。
境内には式内社4社(神魂伊豆乃賣神社・神魂神社・比古佐和氣神社・意布伎神社)が合祀されており、かつては伊務谷大明神と呼ばれていたと伝わります。都我利神社(東の宮)に対する「西の宮」としても知られます。また本殿の裏手には古墳があり、祭神が国土巡行の際にこの地で薨じられたため神陵を造ったとする伝承が地元で紹介されることもあります(社には由緒の表記がないため、参考情報として)。
東側に鎮座する蘆高(葦高)神社
伊努神社の東側には、夫神・赤衾伊農意保須美比古佐和気能命を祀る蘆高(葦高、あしたか)神社が鎮座しています。所在地は出雲市美野町935です。夫婦の神様が田んぼを挟んで別々のお社に鎮座し、あぜ道を突っ切って歩くと徒歩約5分という近さです。この夫婦神の配置から、伊努神社とあわせて巡る参拝が夫婦円満・良縁を願う人々に勧められており、地元では両社を結ぶ道を「恋人ロード」と呼ぶ愛称で紹介されることもあります(この愛称は公式資料では確認できないため、参考情報として)。参拝の詳細は記事2「ご利益編」もあわせてご覧ください。
多久神社(島根県出雲市)

- 所在地:島根県出雲市多久町274
- 主祭神:天甕津日女命(天御梶日女命と同一視)
- 社格:式内社・多久神社に比定(『出雲国風土記』に「多久社」)
- 見どころ:大船山を望む社地、雨乞い祈願の石神伝承
多久神社は、小山の上に鎮座する式内社の古社で、旧称は大船大明神といいます。由緒では、阿遅須枳高日子命の后・天御梶姫命(天甕津日女命と同一視される)が当地で多伎都比古命をお産みになったと伝えられ、風土記の原文には「所謂石神は即ち多伎都比古之命の御魂なり。旱に當ひて雨を乞ふ時は必ず零らせたまへり」、つまり雨乞いの際に必ず雨をもたらしたと記されています。なお神社ファンは松江市鹿島町の多久神社も同じ女神の祀り社として挙げています。
花長上神社(岐阜県揖斐川町)

- 所在地:岐阜県揖斐郡揖斐川町谷汲名礼1211-1
- 主祭神:天甕津日女命
- 社格:式内社・花長神社に比定
- 対応社:真南約1.4kmの花長下神社(祭神は夫神・男神)
花長上神社は、七社明神とも称した天甕津日女命を祀る古社で、式内社・花長神社に比定されています。境内入口からは300mほどの長い参道が続きます。真南約1.4kmの位置には、男神である夫神を祀る花長下神社(同町谷汲名礼848-1)が鎮座しており、出雲の伊努神社と蘆高(葦高)神社と同じく、姫神と男神が距離を置いて向かい合う構図になっています。両社の祭礼は交互に行われています。出雲の神々の信仰が、古代において東海地方へも広がっていたことをうかがわせる興味深い事例です。
阿豆良神社(愛知県一宮市)

- 所在地:愛知県一宮市あずら1-7-19
- 祭神:天甕津媛命(あめのみかつひめのみこと・阿麻乃弥加都比女)
- 由緒:『尾張国風土記』逸文の伝承
阿豆良神社は、天甕津日女命の別称「阿麻乃弥加都比女」を天甕津媛命として祀る神社です。由緒は、垂仁天皇の御子・品津別皇子が七歳になっても言葉を話せず、皇后の夢に現れた阿麻乃弥加都比女が「私を祀れば皇子は話すようになるだろう」と告げたという『尾張国風土記』逸文の説話に遡ります。言葉の神としての信仰が伝わる、天甕津日女命信仰の東方への広がりを示す社です。
参拝の作法と問い合わせ
伊努神社・蘆高(葦高)神社への参拝は、一般的な神道の作法に則ります。鳥居の前で一礼し、参道の端を歩いて手水舎で心身を清め、拝殿で「二拝二拍手一拝」の作法にて祈りを捧げましょう。伊努神社は島根県神社庁のデータに宮司名が掲載されておらず、兼務社とみられます。御朱印の可否や受けられる場所は、神社庁データに記載の連絡先(0853-24-1400)へ事前に確認しておくと確実です。
よくある質問(FAQ)
Q. 伊努神社の主祭神は天甕津日女命ですか?
A. 主祭神は夫神の赤衾伊努大住比子佐倭氣命で、天甕津日女命は后神(配祀神)として祀られています。
Q. 「恋人ロード」とはどういう意味ですか?
A. 伊努神社と、東側に鎮座して夫神を祀る蘆高(葦高)神社を結ぶ道の愛称として紹介されることがあります。夫婦の神様が別々のお社に鎮座し、あぜ道を歩いて約5分の距離で向かい合っていることに由来します。なおこの愛称は公式資料では確認できないため、参考情報としてご利用ください。
Q. 多久神社(出雲市)は天甕津日女命を祀っていますか?
A. はい。多久神社は天甕津日女命(天御梶日女命と同一視される女神)を主祭神とする式内社の古社です。『出雲国風土記』の原文では伊努郷の天甕津日女命と楯縫郡の天御梶日女命は別の条に記されますが、神社での祀りでは同一神として扱われます。詳しくは「神話・正体編」を参照してください。
Q. 伊努神社に御朱印はありますか?
A. 神社庁のデータに宮司名が掲載されていない兼務社とみられるため、御朱印の可否は事前に連絡先(0853-24-1400)へご確認ください。
Q. 伊努神社の見どころは何ですか?
A. 式内社4社を合祀する古社の境内に加え、本殿裏の古墳(神陵と伝わる伝承あり)、そしてあぜ道を歩いて約5分の蘆高(葦高)神社との両参拝がおすすめです。例祭は毎年4月29日に行われます。
Q. 伊努神社へのアクセス方法は?
A. 一畑電車「一畑口」駅から車で約7分です。蘆高(葦高)神社とは徒歩で約5分の距離なので、あわせて参拝するのに適した配置です。
関連記事
参考文献・出典
- 『出雲国風土記』(733年)秋鹿郡伊農郷・出雲郡伊努郷・楯縫郡の条
- 『尾張国風土記』逸文
- 島根県神社庁「伊努神社」(https://www.shimane-jinjacho.or.jp/izumo/ed91757a323daf544ed1511d2b015ebc08baa95a.html)
- 出雲市公式サイト「伊努神社」(https://www.city.izumo.shimane.jp/www/contents/1614663669337/index.html)
- 玄松子「祭神記」天甕津日女命・伊努神社・多久神社・花長上神社(https://genbu.net/saijin/amenomikatu.htm)
- 神社ファン「天甕津日女命」・「赤衾伊努意保須美比古佐倭気能命」(https://jinjafan.jp/god/0121/)
- 「天甕津日女命と出雲『伊努神社』と蘆高神社」(https://izumo-enmusubi.com/entry/inu-ashitaka-jinjya/)



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