伊邪那美命(いざなみのみこと)は、伊邪那岐命とともに日本の国土や多くの神々を生み出した女神であり、全国各地の神社に祀られています。夫婦神として縁結びや安産のご利益で知られる一方、黄泉の国の主宰神としての側面から、生と死の境界にまつわる特別な聖地も各地に残されています。
この記事では、伊邪那美命を祀る代表的な神社7社を、それぞれの由緒やご利益とあわせて紹介します。あわせて、参拝時の基本的な作法や御朱印・お守りの授与情報、年間の祭事カレンダーもまとめました。伊邪那美命の神話やご利益そのものについては、それぞれ専用の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
目次
伊邪那美命を祀る全国の神社7選
伊邪那美命は、夫の伊邪那岐命とともに祀られていることが多く、神社によって「黄泉の国との関わり」「夫婦円満」「国生みの聖地」など、異なる側面が強調されています。まずは代表的な7社の特徴を比較してみましょう。
| 神社名 | 所在地 | 伊邪那美命との関わり | 見どころ |
|---|---|---|---|
| 揖夜神社 | 島根県松江市 | 主祭神。黄泉比良坂の伝承地 | 出雲大社と逆向きの御神座 |
| 熊野速玉大社 | 和歌山県新宮市 | 熊野夫須美大神として主神の一柱 | 「新宮」の由緒、世界遺産 |
| 熊野那智大社 | 和歌山県那智勝浦町 | 熊野夫須美大神として主祭神 | 落差133mの那智の滝 |
| 熊野本宮大社 | 和歌山県田辺市 | 熊野三所権現の一柱として関連 | 熊野三山・熊野古道の中心 |
| 多賀大社 | 滋賀県犬上郡多賀町 | 伊邪那岐命とともに主祭神 | 年間約170万人が参拝 |
| 伊弉諾神宮 | 兵庫県淡路市 | 伊邪那岐命とともに主祭神 | 樹齢約900年の夫婦大楠 |
| 花窟神社 | 三重県熊野市 | 『日本書紀』が伝える御陵 | 社殿を持たない巨岩がご神体 |
揖夜神社(島根県)—黄泉の国伝承地
島根県松江市に鎮座する揖夜(いや)神社は、伊邪那美命を主祭神に祀る由緒ある古社です。神社の近くには、現世とあの世の境界線とされる「黄泉比良坂(よもつひらさか)」の伝承地があり、伊邪那岐命が巨大な岩で道を塞ぎ、夫婦が永遠の別れを告げた舞台と語り継がれています。
こうした背景から、揖夜神社は黄泉の国と非常に縁が深く、境内は厳かで神秘的な空気をまとっています。本殿の御神座の向きが出雲大社とは逆になっているなど、黄泉の世界を象徴する独特の様式を持つことも特徴です。生と死の境界や、大切な人への想いを感じられる聖地として、多くの参拝者が訪れています。
熊野速玉大社(和歌山県)—伊邪那岐命・伊邪那美命を祀る「新宮」

和歌山県新宮市に鎮座する熊野速玉大社は、熊野三山のひとつで、全国に数千社ある熊野神社の総本宮のひとつです。主祭神は熊野速玉大神(伊邪那岐命)と熊野夫須美大神(伊邪那美命)で、夫婦神がともに祀られています。熊野権現が最初に降臨したとされる神倉山の「旧宮」に対し、遷座後の現在地は「新宮」と呼ばれ、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成資産にもなっています。
熊野那智大社(和歌山県)—熊野夫須美大神と那智の滝

熊野三山のひとつである熊野那智大社では、主祭神の「熊野夫須美大神(くまのふすみのおおかみ)」として伊邪那美命が祀られています。「夫須美」は「結び」や生成発展を意味し、万物を生み出す母なる女神としての性格を今に伝えています。境内近くには落差133mを誇る那智の滝が流れ、癒やしや安産を求める参拝者が後を絶ちません。
熊野本宮大社(和歌山県)—熊野三山・熊野古道の中心

熊野三山の中心とされる熊野本宮大社は、熊野古道の参詣道が集まる聖地で、全国4,700社以上の熊野神社の総本宮です。主祭神は家都美御子大神(けつみみこのおおかみ)で、素戔嗚尊とする説が広く知られていますが、伊邪那美神とする異説もあり、その正体は諸説あるとされています。熊野本宮大社・熊野速玉大社・熊野那智大社の三社は、互いの主祭神を分け合って祀る「熊野三所権現」という信仰でつながっており、三社を巡る「熊野詣」は、けがれを払い新たな自分によみがえる「再生の旅」として親しまれてきました。
多賀大社(滋賀県)—「お多賀さん」と延命長寿

滋賀県犬上郡多賀町に鎮座する多賀大社は、「お多賀さん」の愛称で親しまれ、年間約170万人もの参拝客で賑わう大社です。伊邪那岐命と伊邪那美命の二柱を祀り、国生みを成し遂げた生命の親神様であることから、延命長寿や縁結びのご利益で知られています。豊臣秀吉が母の病気平癒を願い、天正16年に米1万石を寄進したという逸話も残されています。
伊弉諾神宮(兵庫県)—国生み神話ゆかりの古社

兵庫県淡路市に鎮座する伊弉諾神宮は、国生み神話で最初に誕生したとされる淡路島に位置する、日本最古級の由緒を持つ神社です。伊邪那岐命が余生を過ごした「幽宮(かくりのみや)」の御陵跡に創祀されたと伝えられ、伊邪那美命とともに夫婦神が主祭神として祀られています。境内には樹齢約900年の「夫婦大楠(めおとのおおくす)」がそびえ、二柱の神の深い絆を象徴する御神木として大切に守られています。
花窟神社(三重県)—『日本書紀』が伝える伊邪那美命の御陵

三重県熊野市に鎮座する花窟(はなのいわや)神社は、『日本書紀』に「紀伊国熊野の有馬村に葬りまつる」と記された、伊邪那美命の御陵と伝えられる聖地です。社殿を持たず、高さ約45mの巨岩そのものをご神体として祀るという、日本でも数少ない古い信仰の形を今に伝えています。境内には、伊邪那美命が産んだ火の神・軻遇突智尊を祀る「王子の窟」もあわせて祀られています。
参拝前に知っておきたい作法とマナー
伊邪那美命は、国土や神々を生み出した生命の母であると同時に、黄泉の国の主宰神としての側面も持つ神様です。神社を訪れる際は、この両方の側面への敬意を払い、丁寧な作法で参拝することが大切です。
鳥居の前では衣服を整えて軽く一礼し、参道の中央(正中)を避けて端を歩くのが古くからの習わしです。手水舎では左手、右手、口の順に清め、拝礼は二拝二拍手一拝が基本となります。ただし神社によって独自の作法が定められている場合もあるため、現地の案内板に従うと安心です。神前に立った際は、自分の願い事を伝える前に、日々の平穏な生活への感謝をまず述べるとよいとされています。
御朱印・お守りの授与情報
伊邪那美命を祀る神社では、それぞれの神様の特性に合わせた授与品を受けられます。熊野三山では、導きの神鳥である八咫烏をあしらったお守りや、カラス文字で描かれた特有の護符「熊野牛王神符」(初穂料はサイズによりおおよそ800〜2,000円程度)が知られています。多賀大社では、無病息災や延命長寿のご神徳が宿るとされる「お多賀杓子」というしゃもじ型の縁起物が人気です。
花窟神社の御朱印は初穂料300円(限定の見開き御朱印は500円)が目安で、隣接する道の駅「熊野・花の窟」から続く参籠殿で授与されます。各神社でいただける通常の御朱印は、初穂料300〜500円程度に設定されているのが一般的です。お受けしたお守りは、カバンや財布など日常的に使うものに付けると、神様とのご縁を身近に感じられるでしょう。
祭事・特別な参拝日カレンダー
伊邪那美命を祀る神社では、年間を通して伝統的な祭事が行われています。
- 多賀大社(滋賀県):4月22日「古例大祭」(鎌倉時代から続く騎馬行列)/8月3日〜5日「万灯祭」(1万灯以上の提灯で境内が彩られる)
- 花窟神社(三重県):2月2日・10月2日「お綱かけ神事」(高さ約45mの巨岩から約170mの大綱を七里御浜まで引き渡す神事)
- 揖夜神社(島根県):8月28日「穂掛祭」(中海の神石へ神舟が向かう神事。還幸式では鈴成提灯が参道を照らす)
参拝の計画を立てる際は、こうした祭事の時期に合わせると、より深くご神徳を感じられるはずです。
まとめ
今回は、伊邪那美命を祀るおすすめの神社と、参拝の作法やご利益の受け取り方について解説してきました。
- 黄泉の国伝承地・揖夜神社、国生みの聖地・伊弉諾神宮など、7つの代表的な神社
- 参拝時の基本的な作法とマナー
- 御朱印・お守りの授与情報と、年間の祭事カレンダー
それぞれの神社が持つ独自の歴史や神話の舞台としての魅力を味わいながら、ぜひ足を運んでみてください。伊邪那美命の神話や、より詳しいご利益について知りたい方は、あわせて関連記事もご覧ください。
出典・参考文献
- 『古事記』(712年)
- 『日本書紀』(720年)
- 熊野本宮大社 公式サイト
- 熊野速玉大社 公式サイト
- 多賀大社 公式サイト
- 揖夜神社・伊弉諾神宮・花窟神社 関連情報



コメント