天津甕星と大甕神社|宿魂石の伝承地と全国の星宮神社ガイド

神話時代の天体観測 日本神話

天津甕星(あまつみかぼし)ゆかりの地として最もよく知られているのが、茨城県日立市に鎮座する大甕神社です。この記事では、大甕神社への具体的な参拝ルートと、全国に点在する「星宮神社」の分布や特徴をあわせて紹介します。天津甕星の神話や、授かれるご利益については、それぞれ専用の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

目次

大甕神社(茨城県日立市)

宿魂石に封じられた伝承

大甕神社(茨城県日立市)

大甕神社の主祭神は建葉槌命(たけはづちのみこと)、そして地主神として甕星香香背男(天津甕星)が祀られています。社伝によると、経津主神・武甕槌神の二柱をもってしても服従させられなかった香香背男を、倭文神・建葉槌命が鎮め、その荒魂を宿魂石(しゅくこんせき)と呼ばれる巨大な岩に封じ込めたと伝えられています。この宿魂石は一つの石ではなく、約5億年前のカンブリア紀の地層からなる岩山そのものを指しており、その頂上に建葉槌命を祀る本殿が、北西側の麓には甕星香香背男を祀る社が鎮座するという、珍しい配置になっています。

徳川光圀による遷座の歴史

大甕神社は、社伝によれば皇紀元年(紀元前660年)の創建と伝えられ、当初は現在の風神山付近にあたる大甕山の山上に祀られていました。時代が下った元禄8年(1695年)旧暦4月9日、水戸藩第2代藩主・徳川光圀(水戸黄門として知られる人物)の命により、甕星香香背男の霊力を封じた宿魂石がある現在の地へと遷座されました。この際、久慈・南高野・石名坂の三村の鎮守と定められ、地域に根ざした信仰の中心として今日まで受け継がれています。

大甕神社への参拝ルートと現地の様子

大甕神社は、JR常磐線の大甕駅から徒歩約20分の場所に鎮座しています。境内には駐車場も用意されているため、車での参拝も可能です。国道6号沿いには大きな鳥居が立ち、2023年に建立された神門をくぐって境内へと進みます。1933年に建てられた木造銅板葺きの拝殿の奥に、宿魂石と呼ばれる岩山がそびえ立っており、その頂上に本殿が鎮座しています。

この本殿へお参りするには、参道の途中にある鎖場を伝って岩山を登る必要があります。急な坂や石を越える必要があるため、歩きやすい靴で訪れることをおすすめします。難易度自体はそれほど高くありませんが、鎖につかまりながら少し険しい道のりを登りきった先にたどり着く本殿は、登拝そのものが参拝の一部であるかのような、特別な達成感を味わえる場所です。宿魂石の北西側には、地主神である甕星香香背男を祀る社もあわせて祀られています。

全国の「星宮神社」をめぐる

茨城県龍ケ崎市に鎮座する星宮神社

日本全国には「星宮神社」「星神社」と呼ばれる神社が数多く存在し、中でも栃木県はその数が日本一多いとされ、宗教法人登録数だけで157社、かつて星宮と称していた神社まで含めると261社にのぼるという調査もあります。

ただし、ここで注意したいのは、これらの星宮神社の多くが祀っているのは磐裂神(いわさくのかみ)・根裂神(ねさくのかみ)という神様であり、天津甕星(甕星香香背男)を直接祀っているわけではないという点です。栃木県の星宮神社は、日光修験と虚空蔵菩薩の信仰が深く結びついて各地に広まったとされ、明治の神仏分離令によって「星宮神社」という名前に改められた社も少なくありません。氏子が神使とされるうなぎを食べないという風習が、複数の星宮神社に共通して伝わっているのも興味深い特徴です。

一方で、茨城県龍ケ崎市に鎮座する星宮神社のように、天御中主大神(あめのみなかぬしのおおかみ)を祭神とし、北斗七星・北極星を「天の真中」に見立てて社名の由来とする神社も存在します。こうした神社は、後の時代に広まった妙見信仰(北極星や北斗七星を神格化する信仰)とのつながりが深いと考えられます。同じ「星宮神社」という名前でも、由緒や信仰の系統は一様ではなく、天津甕星に直接つながる社と、磐裂神・根裂神や妙見信仰に由来する社とが、全国に混在しているのが実情です。

そのほかの関連伝承地

大甕神社に伝わる伝説では、常陸国の峠にあった巨大な石が天まで届こうとしたのを、建葉槌命が鉄の靴で蹴り砕いたところ、そのかけらの一つが日立市の河原子(かわらご)へ、もう一つが東海村の石神(いしがみ)へ落ちたと伝えられています。こうした地名にも、天津甕星をめぐる伝承の広がりを見て取ることができます。また、鹿島神宮の社伝によれば、天津甕星を鎮めるために遣わされた建葉槌命は、大甕から西へ約20キロメートル離れた静(しず)の地に陣を構えたとされ、現在の静神社(茨城県那珂市)にその伝承が残されています。

まとめ

今回は、天津甕星ゆかりの大甕神社と、全国の星宮神社について解説してきました。

  • 大甕神社の宿魂石の伝承と、徳川光圀による遷座の歴史
  • 大甕神社への参拝ルートと、鎖場を伴う本殿までの道のり
  • 全国の星宮神社の分布と、系統の異なる複数の信仰

天津甕星の神話や、大甕神社で授かれるご利益について詳しく知りたい方は、あわせて関連記事もご覧ください。

出典・参考文献

  • 『日本書紀』(720年)
  • 大甕神社 公式サイト・社伝
  • 日立市公式ウェブサイト(宿魂石の解説)
  • 栃木県神社庁

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