「天手力男神ってどんな神様なんだろう」「力持ちの神様が祀られている神社に行ってみたい」——そんな方に向けて、先に結論からお伝えします。
【先に結論】
- 天手力男神(アメノタヂカラオ)は、天岩戸神話で怪力を発揮した力の神。天照大御神を岩戸の外へ引き出した立役者です
- ご利益として広く知られる「開運」「厄除け」「スポーツ上達」は、神話そのものに書かれた記述ではなく、後世の信仰の中で形づくられたものです
- 全国に祀る神社は数多くありますが、この記事では特にゆかりの深い7社を、アクセス情報とあわせて紹介します
この記事では、天手力男神の基本プロフィールから神話でのエピソード、ご利益、祀る神社7選までを、記紀に書かれていることと後世の信仰とを区別しながらまとめました。
この記事でわかること
- 天手力男神の読み方・系譜・記紀での登場
- 天岩戸神話・天孫降臨でのエピソード
- 「神話の記述」と「後世の信仰」を分けたご利益の解説
- 天手力男神を祀る神社7選(アクセス情報つき)
- 天照大御神・思兼神など関係の深い神々
この記事を書いているのは
この記事は、島根県雲南市を拠点に日本神話のAI映像化に取り組むNext Z-one(ネクストゾーン)が制作しています。天手力男神が活躍する天岩戸神話は、共演した天照大御神・天宇受売命・思兼神の記事とあわせて読むと、物語のつながりがより深く見えてきます。
目次
- 天手力男神とは?読み方・系譜・記紀での登場
- 天手力男神の神話|天岩戸開きと天孫降臨
- 天手力男神のご利益|神話の記述と後世の信仰
- 後世の信仰に見る天手力男神の広がり
- 天手力男神を祀る神社7選
- 天手力男神と関わりの深い神々
- 天手力男神についてよくある質問
- まとめ
天手力男神とは?読み方・系譜・記紀での登場

天手力男神(あめのたぢからおのかみ)は、日本神話に登場する力の神です。『古事記』では「天手力男神」、『日本書紀』では「手力雄神」「天手力雄神」と表記され、後世には「手力雄命」「手力男之命」とも呼ばれます。「天」は高天原に由来する神であることを、「手力」は腕力・筋力を、「男(雄)」は男性を意味するとされています。
記紀での位置づけ
國學院大學の「古事記における神名データベース」によると、天手力男神は『古事記』では天岩戸・天孫降臨の場面に、『日本書紀』では「手力雄神」の名で登場します。天孫降臨の際には、邇邇芸命に随伴した神々のうち「五伴緒(いつとものお)」(天児屋命・布刀玉命・天宇受売命・伊斯許理度売命・玉祖命の5柱)とは別枠で、八咫鏡や思金神、天石門別神とともに「副えられた」神として記されており、その後は佐那県(さなのあがた、現在の三重県多気郡)に鎮座するよう定められたと伝わります。
「思兼神の子」という俗説について
インターネット上では、天手力男神を「思兼神(オモイカネ)の子」として紹介する解説を見かけることがあります。ですが、『古事記』『日本書紀』の本文を確認する限り、両者の間に親子関係を明記した記述は見当たりません。天手力男神は、天岩戸神話にも天孫降臨にも系譜の説明を伴わず単独で登場する神で、「思兼神の子」という設定は後世の解釈が積み重なって広まった可能性が高いと考えられています。頭脳の神・思兼神と力の神・天手力男神という組み合わせが分かりやすいためか、俗説として定着した例といえるでしょう。
天手力男神の神話|天岩戸開きと天孫降臨
天岩戸を開いた場面
天手力男神が最も知られる活躍は、天岩戸神話での岩戸開きです。太陽神・天照大御神が、弟・須佐之男命の乱暴な振る舞いに心を痛めて天岩戸に隠れると、世界は闇に包まれました。八百万の神々が天安河原に集まり相談した結果、天宇受売命が岩戸の前で舞を披露し、神々を笑わせます。外の様子を不思議に思った天照大御神が岩戸を少し開けたその瞬間、脇に控えていた天手力男神が岩戸に手をかけ、力任せに開け放ちました。こうして世界に光が戻ったと『古事記』に記されています。
岩戸が戸隠山になったという伝承
天手力男神が開け放った岩戸を、そのまま遠くへ投げ飛ばしたという伝承があります。その岩戸が飛来して落ちた先が、長野県の戸隠山(標高1,904m)になったと伝えられています。神話の舞台とされる宮崎県高千穂から長野県までは直線距離で約700kmあり、あくまで伝承上のスケールですが、戸隠信仰の基盤となっている物語です。現在も山麓には戸隠神社が鎮座し、多くの参拝者を集めています。
天孫降臨と伊勢神宮相殿神
天岩戸の場面ののち、天手力男神は邇邇芸命の天孫降臨にも随伴したとされ、最終的に伊勢国の佐那県(現在の三重県多気郡)に鎮座したと伝わります。伊勢神宮内宮(皇大神宮)の正殿には、天照大御神を中心に、向かって左に天手力男神、右に万幡豊秋津姫命が相殿神として祀られています。ただし『日本書紀』本文を厳密に読み解くと、鏡とともに祀るよう定められたのは本来、天児屋命・太玉命、あるいは思金神であったと解釈できる記述もあり、天手力男神・万幡豊秋津姫命への置き換えは、平安時代の『皇大神宮儀式帳』『倭姫命世紀』の段階から見られるようになったものです。平安時代の『皇大神宮儀式帳』によれば、天手力男神の御神体は「弓」とされています。
天手力男神のご利益|神話の記述と後世の信仰
天手力男神のご利益としてよく紹介される「開運」「厄除け」「スポーツ上達」などは、天岩戸神話そのものに直接書かれている記述ではありません。神話で語られる「怪力で岩戸を開いた」というエピソードをもとに、後世の信仰の中で少しずつ意味づけが加えられ、現在の形になったと考えられます。ここでは、神話の記述と、後世に形づくられたご利益とを分けて紹介します。
| 分類 | 内容 |
|---|---|
| 記紀に書かれていること | 怪力で天岩戸を開け放ち、天照大御神を導き出した。天孫降臨に随伴した。 |
| 後世の信仰で形づくられたご利益 | 開運招福・厄除け・スポーツ上達・勝負運・技芸上達・仕事運・歯の健康 など |
開運招福・厄除け
岩戸を開いて世界に光を取り戻したという神話にあやかり、閉ざされた状況を打ち破る「開運」の神として信仰されるようになりました。厄除けの面でも、長野県の戸隠神社や三重県の佐那神社などで、毎年多くの参拝者が祈祷を受けています。
スポーツ上達・勝負運
怪力の神話にちなみ、スポーツや武道の必勝祈願で信仰される代表格です。岐阜県各務原市の手力雄神社には、シーズン前にプロ野球選手やJリーガーが訪れることで知られ、長野県の戸隠神社奥社にも、大会を控えた学生たちが足を運びます。
技芸上達・仕事運
「手力(たぢから)」という名前から、手先の技術や職人技の上達にご利益があるとされ、建築職人やエンジニアなど、専門技術を要する職業の参拝者も見られます。新しい事業や困難な仕事に取り組む際の後押しとして信仰されてきました。
歯の神様という珍しいご利益
兵庫県尼崎市を中心に4社が鎮座する白井神社は、いずれも天手力男命を主祭神とし、「歯神社(はじんじゃ)」の愛称で親しまれています。力強く岩戸をこじ開けたエピソードが、丈夫な歯や噛む力と結びつけられ、歯痛平癒を願う参拝者から信仰を集めています。境内では歯を守るお守りも授与されています。
後世の信仰に見る天手力男神の広がり
天手力男神は、天岩戸神話を土台にしながら、山岳信仰・神楽・都の祭礼など、さまざまな形で信仰の広がりを見せてきました。いずれも記紀本文そのものというより、後世の解釈や地域の信仰の中で育まれてきたものです。
戸隠信仰
標高1,904mの戸隠山は、天手力男神が投げた岩戸が飛来したという伝承の地です。平安時代の嘉祥2年(849年)に修験道の霊場として開山され、神仏習合の時代を経て、多くの修験者が修行する聖地となりました。現在も戸隠神社奥社では天手力男神を主祭神として祀っています。
立山信仰
富山県の立山は、富士山・白山と並ぶ「日本三霊山」の一つです。立山の主峰・雄山(標高3,003m)の山頂に鎮座する雄山神社峰本社では、伊邪那岐神とともに天手力男神が主祭神として祀られています。なお、立山連峰の最高地点は隣接する大汝山(標高3,015m)ですが、雄山神社が鎮座するのは雄山の山頂です。神仏習合の時代には、本地垂迹説にもとづき天手力男神を不動明王の化身とする解釈も生まれ、険しい山々に挑む修験者たちの信仰を集めてきました。
神楽・芸能に見る姿

天岩戸開きのクライマックスは、視覚的に表現しやすいためか、神楽の題材として全国各地で受け継がれています。宮崎県高千穂町で奉納される「高千穂の夜神楽」(国の重要無形民俗文化財)には、全33番のうち「戸取(ととり)」という演目があり、赤い面をつけた舞手が岩戸を投げ飛ばす勇壮な舞を披露します。京都の祇園祭でも、山鉾巡行に登場する「岩戸山」は天岩戸神話を題材にした曳山で、伊弉諾尊・天照大神・手力男命の3柱が御神体として祀られています。
境界を守る神という後世の解釈
天照大御神を岩戸の外へ導いた際、二度と戻れないよう注連縄を張って結界を作ったという逸話から、後世の信仰の中では、天手力男神を「境界の守護神」として位置づける解釈も見られるようになりました。長野県の戸隠神社周辺など、村の入り口や峠の境目に祀られている例があり、疫病や邪気の侵入を防ぐ神として信仰されてきたと伝えられています。ただし、これは記紀本文に直接書かれた役割ではなく、後世の信仰・解釈の中で加えられた意味づけである点には留意してください。
天手力男神を祀る神社7選
天手力男神を祀る神社は全国に数多くありますが、ここでは特にゆかりの深い7社を、アクセス情報とあわせて紹介します。参拝時間や授与品の情報は変わることがあるため、訪れる前に各神社の公式情報を確認してください。
戸隠神社 奥社(長野県)

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 御祭神 | 天手力雄命(奥社) |
| 創建 | 伝・紀元前210年 |
| アクセス | JR長野駅からアルピコ交通バスで約1時間7分「奥社入口」下車、参道を徒歩約40分 |
| 車 | 上信越自動車道 長野ICから約31km |
| 駐車場 | 奥社入口付近に約200台(無料) |
岩戸が飛来して山になったという伝承が残る、戸隠信仰の中心地です。参道には樹齢400年を超える杉並木が続き、奥社まで歩き切るのに一定の体力を要します。
佐那神社(三重県)

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 御祭神 | 天手力男命 ほか |
| アクセス | JR佐奈駅から徒歩約10分 |
| 車 | 伊勢自動車道 勢和多気ICから約5分 |
| 駐車場 | あり |
伊勢神宮にほど近い延喜式内社です。『古事記』に記された「佐那県」の鎮座地に近いと伝わり、境内には力石と呼ばれる巨石があります。
手力雄神社(岐阜県)

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所在地 | 岐阜県各務原市那加手力町4 |
| 御祭神 | 天手力雄神 |
| アクセス | 名鉄各務原線「手力駅」から徒歩約5分 |
| 駐車場 | あり(無料) |
毎年4月第2土曜には、300年以上の歴史を持つ県指定重要無形民俗文化財「手力の火祭」が行われます。1567年、織田信長が稲葉山城攻めの際に戦勝祈願をしたとも伝わります。
雄山神社 峰本社(富山県)

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 御祭神 | 天手力雄神・伊邪那岐神(峰本社) |
| 所在地 | 峰本社は雄山山頂(標高3,003m)。ふもとに前立社壇・中宮祈願殿あり |
| 峰本社へのアクセス | 立山黒部アルペンルート室堂ターミナル(標高2,450m)から一ノ越を経て登り約2時間30分 |
| 開山期間 | 例年7月〜9月ごろ |
峰本社は登山を要する山頂に鎮座しています。本格的な登拝が難しい場合は、ふもとの前立社壇・中宮祈願殿でも参拝できます。
白濱神社(静岡県)

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 伊古奈比咩命神社(白濱神社) |
| 創建 | 伝・約2400年前 |
| アクセス | 伊豆急下田駅からバスで約13分「白浜神社前」下車すぐ |
伊豆最古と伝わる古社で、白浜海岸に隣接しています。伊豆諸島を造り出した神々の伝承が残るこの地で、天手力男神も祀られています。
天石戸別神社(各地)

天手力男神と同一視される、あるいは深い関わりを持つ神として「天石戸別神(アメノイワトワケノカミ)」があります。この神名を冠する神社は全国に点在し、927年成立の『延喜式神名帳』にも複数の記載があります。代表例として岡山県美作市の天石門別神社があり、開運・厄除けを願う参拝者が訪れます。神社ごとに所在地や由緒が異なるため、訪れる際は各神社の公式情報を確認してください。
天手長男神社(長崎県壱岐市)

壱岐国一宮として、天手力男神をはじめとする神々を祀る古社です。創建は8世紀以前と推測され、『延喜式神名帳』に名神大社として記載されています。石段137段を登った先に社殿があり、石造りの肥前狛犬や室町時代の石造宝塔が残ります。壱岐島へは、博多港・唐津東港からのフェリーまたは高速船、長崎空港・福岡空港からの飛行機でアクセスします。
天手力男神と関わりの深い神々

天岩戸神話は、天手力男神一柱の活躍ではなく、複数の神々の連携によって成り立っています。
- 天照大御神:天手力男神が岩戸から引き出した太陽神。天手力男神は伊勢神宮内宮の相殿神として、今も共に祀られています
- 思金神(オモイカネ):岩戸の前で宴を開くという作戦を立案した知恵の神。「思兼神の子」という俗説がありますが、記紀本文に記述はありません
- 天宇受売命(アメノウズメ):岩戸の前で舞を披露し、天照大御神の関心を引いた芸能の女神。この踊りが神楽の起源になったと伝えられています
天照大御神・天宇受売命それぞれの物語やご利益については、個別の記事もあわせてご覧ください。
天手力男神についてよくある質問
Q. 天手力男神は、どんな神様ですか?
天岩戸神話で、天照大御神を岩戸の外へ引き出した力の神です。怪力を象徴する存在として、開運・厄除け・スポーツ上達などのご利益で信仰されています。
Q. 天手力男神の読み方は?
「アメノタヂカラオ」または「アメノタジカラオ」と読みます。『古事記』では「天手力男神」、『日本書紀』では「手力雄神」と表記されます。
Q. 天手力男神は何の神様ですか?
力・腕力を象徴する神です。天岩戸神話での活躍から、開運招福・厄除け・スポーツ上達・勝負運などのご利益で知られていますが、これらは主に後世の信仰の中で形づくられたものです。
Q. 天手力男神と天照大御神の関係は?
天手力男神は、天岩戸に隠れた天照大御神を岩戸の外へ引き出した神です。現在も伊勢神宮内宮の正殿に、天照大御神の相殿神として共に祀られています。
Q. 天手力男神は思兼神の子ですか?
インターネット上ではそのように紹介されることがありますが、『古事記』『日本書紀』の本文に、両者の親子関係を明記した記述はありません。後世の解釈が広まったものと考えられています。
Q. 天石戸別神と天手力男神は同じ神様ですか?
同一視されることがありますが、記紀本文で明確に同一神とされているわけではありません。天石戸別神は、天岩戸神話にゆかりの深い神として、全国の関連神社で祀られています。
Q. 天手力男神を祀る代表的な神社は?
長野県の戸隠神社、三重県の佐那神社、岐阜県の手力雄神社、富山県の雄山神社、静岡県の白濱神社などがあります。詳しくは本記事の神社7選をご覧ください。
まとめ
- 天手力男神は、天岩戸神話で怪力を発揮し天照大御神を導き出した神
- 開運・厄除け・スポーツ上達などのご利益は、神話の記述そのものではなく後世の信仰で形づくられたもの
- 戸隠・立山などの山岳信仰、神楽、祇園祭など、さまざまな形で信仰が広がっている
- 祀る神社は全国各地にあり、それぞれ異なる由緒とアクセス方法を持つ
神話の記述と後世の信仰を区別して知っておくと、実際に神社を訪れたときの見え方も変わってきます。気になる神社が見つかったら、参拝前に公式情報で最新の状況を確認してから足を運んでみてください。
本記事の参考文献・出典(最終確認:2026年9月24日)
- 『古事記』(712年編纂)
- 『日本書紀』(720年編纂)
- 『延喜式神名帳』(927年編纂)
- 『皇大神宮儀式帳』(804年編纂)
- 『倭姫命世紀』
- 神社本庁公式サイト「天孫降臨」:https://www.jinjahoncho.or.jp/shinto/shinwa/story7/
- 國學院大學 古典文化学事業「古事記における神名データベース」:https://kojiki.kokugakuin.ac.jp/
- airtrip「戸隠神社アクセス・駐車場」:https://www.airtrip.jp/travel-column/15418/amp
- tabi-mag.jp「戸隠神社奥社」:https://tabi-mag.jp/nn068
- 三重県観光連盟「佐那神社」:https://www.kankomie.or.jp/spot/8476
- 岐阜市観光コンベンション協会「手力雄神社」:https://www.kankou-gifu.jp/spot/detail_5712.html
- tabi-mag.jp「雄山神社峰本社・雄山登山道」:https://tabi-mag.jp/ty0018/
- co-trip「白濱神社(伊古奈比咩命神社)」:https://co-trip.jp/post/332653



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