【神使一覧】日本神話の神の使い14選|八咫烏・白狐・鹿の意味と神社

日本神話に登場する神様の神使たち 神様図鑑

著者:中村悠(Next Z-one)|参考:古事記・日本書紀、國學院大學 古典文化学事業、各神社の公式由緒

伏見稲荷の狐、春日大社の鹿、日吉大社の猿、熊野の八咫烏――。神使(しんし)とは、神に仕え、神の意思を伝えるとされる動物のことです。

ただし、神社や神話に登場する動物が、すべて「神の使い」というわけではありません。神話の一場面だけで活躍した動物や、動物の姿をした「神そのもの」もいます。この記事では、代表的な14の動物を一覧にし、どの神と、なぜ結びついたのかを神話と神社の両方から解説します。

30秒でわかる「神と動物」4つの関係

  • ① 神使:今も特定の神社で神に仕える動物(狐・鹿・猿・牛・猪)
  • ② 神の使者:神話の一場面で使命を果たした動物(八咫烏・雉・鼠 など)
  • ③ 神聖な動物:神話を動かす重要な動物(白兎・鶏)
  • ④ 神そのもの:動物の姿をした神(蛇・狼)
日本神話に登場する神の使いの動物たち

神使(神の使い)一覧表|14の動物

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動物 関係する神・信仰 分類 会える神社
白狐 宇迦之御魂神(稲荷神) 神使 伏見稲荷大社
鹿 武甕槌命 神使 春日大社・鹿島神宮
猿 山王信仰 神使 日吉大社・日枝神社
牛 菅原道真(天神様) 神使 太宰府天満宮・北野天満宮
猪 八幡信仰・和気清麻呂 神使 護王神社
八咫烏 神武天皇の東征 神の使者 熊野三山・八咫烏神社
雉 国譲り(天若日子) 神の使者 ―
鼠 大国主神 神の使者 大豊神社(京都)
亀 神武天皇の東征 神の使者 ―
鯛・ワニ 海幸山幸・海神 神の使者 ―
白兎 大国主神 神聖な動物 白兎神社(鳥取)
鶏 天照大御神(天岩戸) 神聖な動物 伊勢神宮
蛇・龍蛇 大物主神/出雲の龍蛇神 神そのもの 大神神社・出雲大社
狼 大口真神 神そのもの/御眷属 三峯神社・武蔵御嶽神社

神使とは?眷属・神獣・狛犬との違い

神使(しんし)とは、特定の神社で、神に仕え、神の意思を人に伝える存在とされる動物です。稲荷神社の狐、春日大社の鹿、日吉大社の猿のように、その神社の信仰のなかで今も役割を持ち続けている点が特徴です。

言葉 意味 例
神使 神に仕える動物 稲荷の狐、春日の鹿
眷属 神仏に従う者全般を指す、より広い言葉(もとは仏教語) 三峯神社の「御眷属(お犬様)」
神獣 動物の姿をした神そのもの 大神神社の白蛇
狛犬 神域を守る想像上の守護獣。神の使いではない 参道の両脇の一対の像

※この分類は目安です。八咫烏のように、神話では「使者」でも、後世に神として祀られるようになった例もあります。

今も神社で仕える「神使」

白狐|稲荷神に仕える神使

稲荷神社の神使とされる白狐

「お稲荷さん=狐」と思われがちですが、狐は稲荷神そのものではなく、宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)に仕える神使です。

狐が稲荷の使いとされた理由には諸説あり、稲穂を思わせる黄金色の毛並み、田を荒らす鼠を捕る習性などが挙げられます。伏見稲荷大社の狐像がくわえる鍵は蔵の鍵(富)、玉は霊力を表すとされています。

会える神社:伏見稲荷大社(京都府)ほか全国の稲荷神社
関連:倉稲魂命(宇迦之御魂神)とは/狐が神使になった理由(ご利益の記事)

鹿|神を乗せて奈良へ来た神使

春日大社や鹿島神宮の神使とされる白鹿

春日大社の鹿は、鹿島神宮の武甕槌命(たけみかづちのみこと)が白鹿に乗って奈良の御蓋山に来たという伝承に由来する神使です。そのため鹿島神宮と春日大社は、今も「鹿」でつながっています。奈良公園の鹿が大切に守られているのも、この信仰が背景にあります。

会える神社:春日大社(奈良県)、鹿島神宮(茨城県)
関連:建御雷神(武甕槌命)はなぜ最強?

猿|「魔が去る」神猿(まさる)

日吉大社(滋賀県大津市)では、猿が「神猿(まさる)」と呼ばれ、神の使いとされています。山王信仰のなかで、山の神に仕える賢い動物とされてきました。「まさる」が「魔が去る」「勝る」に通じることから、魔除け・勝運の象徴としても親しまれています。

会える神社:日吉大社(滋賀県)、日枝神社(東京都)など全国の山王・日吉系の神社

牛|天神様の「撫で牛」

天満宮の牛は、学問の神・菅原道真公(天神様)の神使です。道真公が丑年生まれとされることや、亡くなった道真公の亡骸を運ぶ牛車の牛が途中で動かなくなり、その地を墓所とした(現在の太宰府天満宮)という伝承に由来します。境内の「撫で牛」は、自分の悪いところと同じ場所を撫でると良くなるといわれています。

会える神社:太宰府天満宮(福岡県)、北野天満宮(京都府)

猪|和気清麻呂を守った神使

猪は、奈良時代の和気清麻呂(わけのきよまろ)を守ったと伝わる神使です。清麻呂が宇佐八幡宮へ向かう途中、どこからか現れた多くの猪が道中を守り、傷めていた足も癒えたという伝承があります。この話から、足腰の健康・災難除けの神使として信仰されています。

会える神社:護王神社(京都府)

神話で使命を果たした「神の使者」

八咫烏|神武天皇を大和へ導いた霊鳥

日本神話に登場する八咫烏

八咫烏(やたがらす)は、神武天皇が熊野から大和へ進むとき、道案内をした霊鳥です。八咫烏を遣わしたのは、古事記では高木神(高御産巣日神)、日本書紀では天照大神とされています。

今では「三本足の烏」として知られますが、古事記・日本書紀には三本足とは書かれていません。三本足の姿は、太陽に棲む三本足の烏という中国の思想などが重なって広まったと考えられています。後世には、奈良県宇陀市の八咫烏神社のように、八咫烏そのものを神として祀る神社も生まれました。サッカー日本代表のエンブレムとしてもおなじみです。

会える神社:熊野三山(和歌山県)、八咫烏神社(奈良県)
関連:神日本磐余彦尊(神武天皇)とは

雉|国譲りで遣わされた「鳴女」

雉は、国譲りの神話で、天上の神々が天若日子(あめのわかひこ)のもとへ遣わした使者です。名を鳴女(なきめ)といいます。

地上を治めるよう命じられて降った天若日子は、大国主神の娘と結婚し、8年たっても戻りませんでした。理由を問うために雉の鳴女が遣わされますが、天佐具売(あめのさぐめ)が「不吉な鳥だから射なさい」とそそのかし、天若日子は雉を射殺してしまいます。その矢は天まで届き、投げ返された矢に当たって天若日子は命を落としました(還し矢)。

関連:日本神話の家系図(国譲りの神々)

鼠|大国主神を野火から救った

鼠は、スサノオの試練で野火に囲まれた大国主神を救った動物です。古事記では、鼠が「内はほらほら、外はすぶすぶ(中は空洞で、入り口はすぼまっている)」と穴の場所を教え、大国主神はそこに隠れて火をやり過ごしました。鼠は探していた矢まで持ってきたといいます。大国主神と習合した大黒天の使いとしても知られます。

会える神社:大豊神社(京都府・狛ねずみ)
関連:大国主神の正体とは

亀|神武天皇の海路の案内

神武天皇の東征では、亀の背に乗って現れた国つ神が、海の道を案内しました。古事記では、速吸門(はやすいのと)で亀の甲に乗って釣りをしながら現れた人物(槁根津日子・さおねつひこ)が、水先案内を務めたとされます。案内したのは亀そのものではなく、亀に乗った神ですが、海と陸をつなぐ亀の姿が印象的な場面です。

鯛・ワニ(サメ)|海幸山幸の神話

兄の釣り針をなくした山幸彦が海神の宮を訪ねる神話に、鯛とワニが登場します。なくした釣り針は、鯛(赤海鯽魚・たい)の喉に刺さっていたことがわかり、無事に取り戻されました。帰りには、ワニ(サメ)が山幸彦を背に乗せて地上へ送り届けました。山幸彦の妻となった海神の娘・豊玉毘売も、出産のときにはワニの姿になったと語られています。

※「ワニ」はサメを指す古い言葉です。因幡の白兎に登場するワニも同じです。

神話を動かした「神聖な動物」

白兎|因幡の白兎と大国主神

大国主命の神話に登場する因幡の白兎

因幡の白兎は、ワニ(サメ)をだまして皮をはがされ、大国主神に助けられた兎です。兄神たちのうその教えでさらに苦しんだ兎に、大国主神は「真水で体を洗い、蒲の穂にくるまりなさい」と教えて救いました。兎は大国主神が八上比売と結ばれることを予言し、物語を大きく動かします。

会える神社:白兎神社(鳥取県)

鶏|天岩戸で夜明けを告げた鳥

鶏(常世の長鳴鳥)は、天照大御神が天岩戸に隠れたとき、神々が集めて鳴かせた鳥です。夜明けを告げる鳴き声は、闇から光への転換を象徴しています。伊勢神宮では今も鶏が「神鶏」として大切にされています。

関連:天照大御神/天鈿女命/天手力男神

動物の姿をした「神そのもの」

蛇・龍蛇|大物主神と出雲の龍蛇神

大神神社(奈良県桜井市)の白蛇は、祭神・大物主神(おおものぬしのかみ)の化身とされ、「巳(み)さん」として親しまれています。脱皮をくり返す蛇は、再生や不死の象徴とされ、水をもたらす龍神信仰とも結びついてきました。

出雲の神在月を先導する「龍蛇神(りゅうじゃじん)」

旧暦10月、全国の神々が出雲に集まる「神在月」。その頃、出雲の海岸に打ち寄せられるセグロウミヘビは、神々の到来を先導する「龍蛇様(龍蛇神)」として大切にされてきました。出雲大社の神迎祭では、稲佐の浜で海から神々を迎えます。出雲大社のほか、佐太神社などでも龍蛇の信仰が伝えられています。

私が暮らす島根県雲南市や出雲エリアでは、旧暦10月の「神在月(かみありづき)」になると街全体の空気が少し凛と変わります。出雲大社の『神迎祭』の夜、稲佐の浜に寄せる波間から神々を先導して現れるとされるのが「龍蛇様(セグロウミヘビ)」です。
佐太神社などで授与される龍蛇神のお札を実際に手に取ると、それは遠い神話の出来事ではなく、「今も海と人、そして神様が繋がっている証」として大切に受け継がれていることがよく分かります。地元ではこの時期、騒がしくせず静かに過ごす風習もあり、暮らしの中に神話が生きていることを肌で感じられる瞬間です。

会える神社:大神神社(奈良県)、出雲大社・佐太神社(島根県)
関連:出雲神話とは?

狼|大口真神と「お犬様」

三峯神社や武蔵御嶽神社で信仰される狼・大口真神

狼は「大口真神(おおくちのまがみ)」という神名で、神そのものとして祀られることがあります。田畑を荒らす猪や鹿を追い払う狼は、山里の人々にとって頼もしい守り神でした。

一方、三峯神社では、狼は「御眷属(ごけんぞく)」、つまり神の使いの「お犬様」として信仰され、そのお札をお借りする「御眷属拝借」が今も続いています。神社によって「神そのもの」と「神の使い」の両方の顔を持つのが、狼の信仰の面白さです。

会える神社:三峯神社(埼玉県)、武蔵御嶽神社(東京都)

三峯神社の鳥居の前に置かれた狼の像

なぜ日本の神々は動物と結びついたのか

古代の日本では、山・川・動物など自然のあらゆるものに神が宿ると考えられていました。人々は、動物の行動や特徴に神の意思を見いだしてきたのです。

  • 空を飛ぶ鳥(八咫烏・雉・鶏)→ 天と地をつなぐ
  • 田畑を守る動物(狐・狼)→ 農業の守り神
  • 脱皮する蛇 → 再生・不死の象徴
  • 人に近い猿、力強い牛や猪 → 神と人の仲立ち、守護

神様から探す「この神様の使いは?」

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神武天皇(を導いた) 八咫烏・亀 神日本磐余彦尊とは

伏見稲荷大社の鍵をくわえた狐像

神使についてよくある質問

Q. 神使とは何ですか?

A. 神に仕え、神の意思を人に伝えるとされる動物のことです。稲荷神社の狐、春日大社の鹿、日吉大社の猿、天満宮の牛などが代表例です。

Q. 狛犬は神使ですか?

A. 狛犬は神の使いではなく、神域を守る想像上の守護獣です。ただし、稲荷神社の狐像のように、神使の像が狛犬の位置に置かれている神社もあります。

Q. 「神使」「眷属」「神獣」は何が違いますか?

A. 神使は神に仕える動物、眷属は神仏に従う者全般を指すより広い言葉、神獣は動物の姿をした神そのものです。

Q. なぜ狐は稲荷神社の神使なのですか?

A. 稲穂を思わせる黄金色の毛並みや、田を荒らす鼠を捕る習性などから、穀物の神・宇迦之御魂神の使いと見なされるようになったという説が知られています。

Q. 八咫烏は神ですか、それとも神の使いですか?

A. 神話では神武天皇を導いた神の使者ですが、奈良県の八咫烏神社のように、後世には八咫烏そのものを神として祀る信仰も生まれました。

Q. 八咫烏は本当に三本足ですか?

A. 古事記・日本書紀には三本足とは書かれていません。三本足の姿は、太陽に棲む三本足の烏という中国の思想などが重なって広まったと考えられています。

まとめ:「仕える者」か「神そのもの」かを意識して参拝しよう

神社や神話の動物は、今も神に仕える「神使」、神話の一場面で使命を果たした「使者」、物語を動かした「神聖な動物」、そして「神そのもの」と、神との距離がさまざまです。

次に神社を訪れたら、境内の動物の像が「仕える者」なのか「神そのもの」なのかを意識してみてください。参拝の味わいが、ぐっと深まるはずです。

この記事を書いた人:中村悠(Next Z-one)

島根県雲南市在住。雲南市観光協会の神話観光ガイド養成講座(座学・フィールドワーク)を受講し、古事記・日本書紀・出雲国風土記などの資料と現地取材をもとに、雲南・出雲の神話ゆかりの地を発信しています。雲南の神話をAI映像で伝えるプロジェクトを運営。プロフィール

参考文献・出典

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